ブロックチェーン

ブロックチェーンが電力業界を変える?P2P取引の仕組みや課題

通貨の枠を超えるブロックチェーン

ビットコインが誕生し、その基軸となるブロックチェーンが世界中で注目されています。

仮想通貨の枠を超えた中央集権型のサービスにおいて、ブロックチェーンを取引プラットフォームとしての活用も検討されています。

ブロックチェーンが注目されている理由は、人を介さずに取引が可能であること。そして、取引データの改ざんや商品・サービスの詐欺のリスクを最小限に抑えられることです。

そして、今注目されているサービスとしてカーシェアや電力取引、金融サービスなどがあります。

中でも、電力取引は私たちの生活に密着したサービスのため、気になる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ブロックチェーンと私たちの生活に欠かせない電力について紐解いていきます。

電力の非中央集権型を可能にするブロックチェーン

今後、ブロックチェーンの普及によって、さらに非中央集権型のサービスが増えていくことが予想されます。

なぜなら、これまで一家に一台とされてきた商品やサービスは、時代の流れと共に一人に一台の時代へと移り変わってきているためです。

例えば、自動車やパソコン、スマートフォンなどが挙げられます。需要が増えることで、世帯から個人へと消費の動向が移行してきていることが分かります。

そして、ブロックチェーンは仮想通貨の枠を超え、新たな進化の段階へと歩み始めています。そのサービスの1つに、電力が挙げられます。

現在における電力の供給は、各地域の電力会社が主に行っています。

近年では、太陽光発電システムやコージェネレーション(熱電併給)システムの導入によって、一般家庭でも容易に電力を発電することが可能になりました。

コージェネレーションシステムの詳細については、こちら(経済産業省 資源エネルギー庁エコジェネについてhttp://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/other/cogeneration/

しかし、発電した電力の買い手は電力会社や小売電気事業者に限定され、買い手主導で取引が行われており、電力の価格は徐々に安くなるばかりです。

一方通行で電力の売買が行われているというのが、日本の電力事情なのです。まさに、中央集権型のサービスだということができます。

では、ブロックチェーンがどのように非中央集権型の電力サービスを生み出すことができるのでしょうか。

ブロックチェーン×電力の事例

ここでは、ブロックチェーンを導入し、新たな電力システムの構築を試みている事例があります。

例えば、アメリカでは2016年より、LO3 EnergyとConsenSysのジョイントベンチャーによって、家庭の太陽光発電システムで発電された電力を直接取引できるシステムの開発が行われています。

ヨーロッパでも、Electronやnpowerなどの大手企業がブロックチェーンによる電力システム検討を始めており、Electronにおいては東京電力が2017年末に出資を発表しました。

海外だけでなく、すでに日本でも始められています。

2017年7月、東京電力はドイツの大手電力会社innogy(イノジー)とP2P(ピア・ツー・ピア)プラットフォーム事業を共同で行うことを発表しました。

最近ではシンガポールのブロックチェーンスタートアップ企業との提携も行われています。

関西電力では2018年4月に、オーストラリアのパワーレッジャー社と共同で、ブロックチェーンを活用した太陽光発電システムによる余剰電力のP2P取引の実証実験を開始。

一方、新電力ベンチャー企業のみんな電力では、ブロックチェーンによる電力取引プラットフォームを構築し、2018年秋よりサービス開始を予定しています。

このように、ブロックチェーンによる新たな電力システムの開発は始まっており、個人間での電力取引がすぐ目の前まで訪れているのです。

ブロックチェーンによる電力取引が行われるのも、時間の問題だということがお分かりいただけたことでしょう。

では、実際にブロックチェーンによる電力取引が行われる場合、どのような流れで電力の売買が行われるのでしょうか。

ブロックチェーンによる電力取引の流れ


上記の図は、中央集権型システムとP2P取引を図解にしたものです。

この図より分かる通り、従来の中央集権型システムでは電力会社と住宅、電力会社と企業という一方向で電力が供給されていることが分かります。

一方、P2P取引では住宅や企業が自身で発電した電力を互いに売買でき、双方向において電力取引が可能であることが一目瞭然です。

P2P取引が実現されれば、太陽光発電システムやコージェネレーションシステムによって生じた余剰電力を個人間もしくは個人と企業間での売買が可能になるのです。

生産者(Producer:プロデューサー)と消費者(Consumer:コンシューマー)を組み合わせて生まれたのが「プロシューマー」という造語です。

住宅や企業で発電された電力を自身で消費し、余剰電力を他者へ売る生産消費者を表しています。

これまで私たちは電力会社から電力を買う消費者でしかありませんでした。しかし、これからは生産消費者として個人や企業が電力の売り手買い手を自由に選べるようになるのです。

つまり、スマートフォンの購入先を三大キャリアから格安SIMへと乗り換えるように、電力も価格の安さや環境にやさしい電力を自由に選ぶことができるということです。

P2P取引によるメリット

P2P取引によるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。消費者と事業者側に分けて説明いたします。

【消費者側のメリット】

  • 電力の販売価格が安い所からの購入が可能
  • ブロックチェーンで繋がった個人や企業との間での電力取引が可能
  • 電力がいつ、どこで、どのようにして、作られたものなのかをトラッキングできる

消費者側のメリットは、何よりも販売価格で購入先を選べるため、月々の電気代を削減することが可能です。

また、トレーサビリティシステムのように、電力が発電された場所や発電方法などの情報を確認することができるため、特定の個人や地域、発電方法などから選んで購入できます。

【事業者側のメリット】

  • 取引データの改ざんが困難なため、堅牢性や安全性が高まる
  • スマートコントラクト(契約の自動化)により、取引に関わるプロセスが自動化できる
  • 電力の流通コスト(人件費や設備投資費、運転維持費など)が削減できる

事業者側のメリットとしては、ブロックチェーン上に取引データが記録されるため、データが第三者によって改ざんされるリスクが極めて低くなります。

さらに、スマートコントラクトにより、取引の実行や認証手続き、決済に至る一連のプロセスは人を介さずに自動化させることができます。

ただ、P2P取引を普及させるためには、いくつかの課題が残されています。どのような課題があるのでしょうか。

ブロックチェーンによる電力取引の課題

ブロックチェーンによる電力取引の実現のためには、課題も残されています。例えば、以下の項目などが挙げられます。

  • 電力取引における制度変更やプロシューマーに関する法規制
  • P2P取引システムの構築や運営にかかるコスト
  • ブロックチェーンやP2P取引による電力取引に対する消費者の関心の低さ

現行制度では個人間や個人と企業間での電力取引に関する制度がないため、政府による制度変更やプロシューマーに関する法規制が必須です。

さらに、P2P取引を実現させるためには、配電のための設備投資やシステムの構築、運営に莫大なコストがかかります。

最重要課題として考えられるのは、消費者の関心の低さです。どんなに完ぺきな環境とシステムが構築されても、それを利用するプロシューマーがいなければ何の意味もありません。

そのため、P2P取引の普及には、消費者にブロックチェーンの安全性や利便性を理解させることが必要なのです。

電力業界に変革起こすブロックチェーン

ブロックチェーンは、もはや仮想通貨を存在させるためだけの技術ではありません。今や、電力業界に変革を起こす段階にまで来ています。

さらに、P2P取引が個人間、個人と企業間で可能になれば、災害時や事故などで電力が不足した一般家庭や特定の地域に対し、電力を補うことも可能でしょう。

このように、ブロックチェーン技術は、私たちの生活をより安全に、より効率的に変える未来を想像させてくれます。

そして、ブロックチェーン技術を活用した非中央集権型サービスはさらに、広まっていくことでしょう。