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ブロックチェーンがついに農業分野にも進出
仮想通貨の根幹技術である「ブロックチェーン」が、金融界の垣根を超えて今回農業でも活用の動きが注目されています。
有機農業発祥の町として知られる宮崎県綾町では綾町では「改ざん不可能な情報台帳」というブロックチェーンの特徴に注目し、有機野菜の付加価値向上に活かそうとしています。
なぜ綾町において取り組みが始まったのだろうか
綾町は、1988年制定の「自然生態系農業の推進に関する条例」のもと、食の安全を求める消費者のため厳格な農産物生産管理を行っています。
記録したデータの改ざんが難しいというブロックチェーンの特徴を生かし、野菜の品質証明に利用する取り組みになり
「エシカル(倫理的)」
という新たなものさしをつくり、野菜に新たな付加価値をつけようとする試みとして、綾町にたいへん注目が集まっています。
綾町は宮崎市の北西に位置し、町の80%が森林を占め、人口は約7500人ですが、人口増加は微増傾向を保っています。
人口増加を支えているのは、毎年300人前後にのぼる移住者であり、人口全体から見れば、かなり高い割合で、しかも3分の1は県外からの移住です。
移住者の多くは20代後半から30代とのことであり、有機農業に携わりたいという移住者だけではなく、安全な食品を手に入れやすいということから子育ての場として綾町を選ぶ人も多いようです。
1988年に制定された綾町憲章により独自の基準を設け、清算された野菜に厳しい格付けも行なってきてこうした努力が実り、町内では高品質な野菜を選んで購入する人が増えてきました。
有機農業参入促進協議会の調べによれば、有機農業従事者の平均所得は約167万円であり、がんばって良い野菜を作っても収入につながらず、これを増やすには生産コストを下げるか、売上を増やすしかありません。
綾町では売り上げ増加を目指し、有機農業の技術で生産されねばならないが品質の高さを証明しないことには始まらないとして技術として適していたのが、ブロックチェーンというわけでした。
どのようにブロックチェーンが活用されていくのでしょうか?
栽培に薬品を大量に使った野菜や、人口素材で作られたフェイクフードが氾濫する現代ですが、綾町は自然生態系を守るという目的で有機農業に取り組んできました。
ブロックチェーンには、誰でもマイニング(台帳管理)に参加できるパブリックチェーンと、限定された人だけでマイニングを行なうプライベートチェーンがあります。
綾町は後者を中心に、両者の技術を活用し
野菜についたQRコードをスマートフォンで読み込むと、画面には写真つきで
- 野菜の収穫日
- 育った畑の土壌検査の結果
- 使った肥料
- 種の購入先
- 生産者名
- 農場の場所
などが絵日記のように表示されるため、購入者は安心して購入ができます。
今回の取り組みは、綾町と電通国際情報サービス(ISID、東京)が2016年10月から行っています。
綾町は1988年、化学肥料や農薬を使わないことをうたう条例を全国で初めて制定し、自然生態系に配慮した農業を続け、町ぐるみで厳しい生産管理をしており、種、土、水、野菜などの品質をこれまでデータとして残してきました。
そんな綾町の有機農法の取り組みに目をつけたISIDは、ブロックチェーンとの相性がいいと考え、共同で取り組むことに至りました。
ブロックチェーンは、インターネット上の一定量データを「ブロック」としてまとめ、時系列順に鎖(チェーン)のように繋げて管理することに名が由来します。
そこで農業においては、そのブロックチェーンの仕組みを利用して
この野菜がどこで使われ、運ばれきたのか記録するトレーサビリティー(生産履歴の管理)の構築が可能であり、「ブロックチェーン野菜」が誕生しました。
そして、ブロックチェーンでは次の3点を検証していきます。
- 1つ目にこれまで実証してきた生産過程だけではなく、流通や最終消費まで含めた農産物のサプライチェーン全体にわたるトレーサビリティを、ブロックチェーンで保証する仕組みを構築しうるかという点
- 2つ目は、ブロックチェーンに記録された情報を、どのようなユーザー体験(UX)を通じて消費者に届ければ、その注文行動に影響を及ぼしうるかという点
- 3つ目は、農産物のトレーサビリティが前述2点の実証により担保・可視化されることで、当該サプライチェーンに関わる個々人や、その周囲(SNSでのつながりを含む)の人々のエシカルな行動が喚起・促進されるかという点
です。
そして農業者の方は自身で作られた「ブロックチェーン野菜」を産地偽装することなく、安心・安全というお墨付きのある野菜としてPRができるサイクルを作れます。
綾町でレタス・人参などを生産する北野将秀さん(43)は、有機農法は手間ひまがかかるが、そのコストを価格に反映しきれていない悩みを抱えていました。
「どこに出しても恥ずかしくない栽培をしてきたが、証明できるものがなく、農薬を使い安く仕上げる農法も否定はしないが、そこと差別化し、理解してもらえる消費者にきちんと届けば、長年の願いがかないます。」
として今回参加を決意しました。
ISIDの鈴木淳一さん(41)は
「安全で環境にやさしい野菜なら高くても買う、という消費者は確実にいるが、産地とうまくつながっていないのが、農業においての問題点になってます。」
「値段や味だけでなく『環境にいい』という新たな『ものさし』がつくれないかという試みでもあります。」
と話しており、昨年3月、東京都港区のアークヒルズで開かれた朝市で野菜を試験的に販売したところ、必要経費を含めて一般の倍近い値段としたのに完売しており、中には5倍の値で買いたい消費者も現れました。
5月には都内のレストランで綾町産野菜を使い、メニューに「値段」の代わりに、「自然生態系への配慮レベル」を可視化したグラフだけを載せて、お客がどう感じるかという実験もした。
ブロックチェーンはすでに私たちの身近な存在へ
ブロックチェーンが農業の分野でも活躍していくことに時代の到来を感じるものです。
私たちにとって食は、人生を左右するものでありそれを新技術によって安全を保証してくれることは人々が徐々に受け入れつつある証拠ではないでしょうか?
また農業だけでなく、保険業界でも技術導入しており他産業での導入も時間の問題ではないでしょうか?
これからも新技術による人々への恩恵となるニュースが報じられることが楽しみです。