ブロックチェーン

【書評】森川夢佑斗著「ブロックチェーンの描く未来」の内容を要約

森川夢佑斗著の「ブロックチェーンの描く未来」が遂に発売

森川夢佑斗氏の著書である「ブロックチェーンの描く未来」が2018年8月10日に遂に出版されました。

本書の著者である森川氏は株式会社Gincoの代表取締役CEOであり、同社はクライアント型による高いセキュリティ性を持った仮想通貨ウォレット「Ginco」の開発や、マイニング事業、ブロックチェーン実用化の為のコンサルティング事業などを手掛けています。

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なお、森川氏は本書以外の著書に「ブロックチェーン入門」「一冊でまるわかり暗号通貨」があり、いずれもブロックチェーン・仮想通貨を知る為に必要な知識がとても良くまとまっています。

そして今回発売された「ブロックチェーンの描く未来」では、森川氏の考えるブロックチェーンの本質的価値や現状と課題、これからなどが一冊にまとまっており、Web3.0の時代やDappsによるアプリケーション3.0について、そしてブロックチェーンの「ルール・ドリブン」といった森川氏の様々な未来の考察を読み取る事が出来ます。

本書はブロックチェーンをビジネスにする人や、ブロックチェーンを更に理解したい人にとっては必読の一冊でしょう。

本記事では、「ブロックチェーンの描く未来」についてその内容を要約し、大事なポイントや興味深い部分などをピックアップして解説して行きます。

「ブロックチェーンの描く未来」の大まかな内容

本書では大きく6章に分かれており、それらは以下のような構成となっています。

  1. 1章:お金の役割とビットコインがもたらすパラダイムシフト
  2. 2章:ブロックチェーンがもたらす記録について
  3. 3章:イーサリアムによって誕生したスマートコントラクトと「契約」について
  4. 4章:Web3.0の未来とブロックチェーンのレイヤー構造について
  5. 5章:ブロックチェーンの課題について
  6. 6章:ブロックチェーンによって実現するユースケースと未来について

本書の冒頭部分ビットコインやブロックチェーンの技術的な解説が多くなっていますが、読み進めて行くとその使われ方や将来の在り方などがイメージ出来るように丁寧に解説されています。

では、以下より本書の中で筆者が最も大切だと考えた部分を切り取って解説していきます。

ブロックチェーンは「お金」「記録」「契約」の再発明

ビットコインから始まったブロックチェーン技術ですが、その活用方法として大きく「お金」「記録」「契約」の3つに分類する事が出来ると本書では述べられています。

ブロックチェーンを用いた「お金」

まず「お金」の部分は、ブロックチェーン技術を用いた決済や送金などで活用され、それによって分散型台帳を用いた今までに無い「お金の管理」が実現出来るようになります。

しかし、既存の金融機関は非中央集権型のビットコインの特性を無視してシステムコストの削減やスピード、セキュリティに特化したお金の開発を進めている傾向にあるのが現状です。
それが主にRippleやHyperLedger、そして日本だとMUFGグループによるMUFGコインなどでしょう。

ブロックチェーンを用いた「記録」

続いて「記録」ですが、ブロックチェーン技術はお金の記録以外にも様々な出来事の記録に応用される試みが行われるようになりました。

仮想通貨・金融分野以外の分野におけるブロックチェーンの活用は「ブロックチェーン3.0」と呼ばれており、不動産や医療・農業など様々な分野での応用が期待されています。

ブロックチェーン技術の「データの改ざんが不可能」といった性質がどの分野でも応用を可能とする部分となっており、その可能性はお金だけに留まりません。

ブロックチェーンを用いた「契約」

2014年のイーサリアム誕生以降、あらゆる契約を自動的に執行する事が出来る「スマートコントラクト」といった概念が生まれ、ブロックチェーンを活用してあらゆる「契約」を再発明する事が可能となりました。

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そもそも私達を取り巻く現実世界では「売買契約」「賃貸契約」「婚姻契約」「業務委託契約」といったように、あらゆる場面で「契約」が密接に関係しています。

既存の世界を支えている契約は国会や裁判所、そして行政機関といった第三者機関が存在した上で成り立っており、そこには「信用」が不可欠でした。

しかし、ブロックチェーン技術を用いる事でそれらの契約をトラストレスに実行することが出来るのです。
ブロックチェーンの特性上、そこに仲裁を行う第三者は存在しておらず、ネットワーク上に追加されたコードこそが正しいルールとなるからです。
これこそが「Code is Law」であり、信用出来る第三者ではなくソースコードが法律のように振る舞いをしてくれるのです。

これによって、あらゆる第三者機関が不要となり、自律的に動く分散化されたシステムを構築する事が可能となります。

ブロックチェーンを用いた「Web3.0」の時代


本書では、ブロックチェーンによって独占的な中央集権型のプレイヤーが、その領土を奪い合っている従来のインターネットが一変すると主張されており、それが森川氏の言う「Web3.0」です。
では、今までのWebと今後のWebの在り方についてをまとめていきます。

インターネットの始まりとなった「Web1.0」

インターネットが生まれた当初、アクセスが可能なのはテキストサイトばかり、そして画像のダウンロードだけで1日掛かってしまうといった「Web1.0」の時代でした。

Web1.0とはインターネットが普及し始めた1990年代半ばから2000年代半ばの期間を指しており、従来情報提供をしたいたラジオ・新聞・テレビなどといったマスメディアの延長上にあるような存在でした。
つまり、その時代には大手媒体といった「発信者」が大衆に向けて一方向に発信していくモデルだったのです。

情報をグローバル化し生活を劇的に変えた「Web2.0」

Web1.0の時代の後は通信速度が改善されて情報が更にグローバルに共有されるようになり、スマホデバイスの普及によって様々なアプリケーションがインフラとして張り巡らされるようになりました。
そしてマスメディア以外にも個人ブログやソーシャルメディアで誰でも情報の発信者になれる時代となったのです。

これが「Web2.0」であり、GoogleやAmazonといった巨大企業が便利なサービスを生み出し、情報のグローバル化、そして人々の生活はオンライン上の情報と一体化するようになりました。

このWeb2.0こそが私達が現在も利用しているWebのモデルであり、Web2.0が今までに無い便利な世の中を創り上げて来たのです。

Web2.0の問題点

Web2.0時代は人々の生活をより豊かにして来ましたが、同時にインターネット内を牛耳る巨大なプラットフォームはユーザーの莫大な情報を握るようになり、情報や収益を独占するようになりました。

例えばアプリをインストールする場合は「Apple Store」や「Google Play」を利用する必要がありますが、アプリ開発者はユーザーの課金収益のおよそ30%が徴収されます。

そしてGoogleやFacebookなどはプラットフォーム内でユーザーの情報を独占しており、そのユーザーの情報を広告主へ売却され、プラットフォーム内のあちこちに広告が貼られます。
これこそが一部のプラットフォーマーによる中央集権化の問題です。

GoogleやFacebookなど、広告に支えられている無料のサービスにおいて、ユーザーは「入荷される商品」であり、真の顧客は広告主です。
本書より引用

 

ブロックチェーンによって変わる「Web3.0」の時代

森川氏は、「Web1.0」「Web2.0」の次に来るのが、独占的な中央管理者が不在で分散化された「Web3.0」だと主張しています。

Web3.0の世界は、独占的な中央管理者同士が地図の上で領土を奪い合うのではなく、インターネットという広大な空間を活かして、様々なプラットフォームが多層的に重なります。
本書より引用

なお、ブロックチェーン技術を用いたWeb3.0時代では、以下の6つの変革が想定されています。

  1. 中央管理者不在で分散化されたプラットフォームとなる。
  2. システムの分散化によって、マシンもプログラムもダウンする事が無い。
  3. データや情報は一部の管理者に所有されず、自らで管理される。
  4. データをコピーによって複製する事は出来ず、ユーザーのデータに資産的価値が生まれる。
  5. 自分を証明するデータとアドレスだけで誰に断ることもなく自由にやり取りが可能となる。
  6. ブロックチェーン上にアクセス出来る限りどんなデバイスでもアクセスが可能となる。

このように、Web3.0の世界では分散化されたそれぞれのプラットフォームで異なるレイヤーが層が重なる事で全体がアップグレードされていきます。

そしてブロックチェーンによって現実世界の前提条件をインターネットの世界へ組み込む事が可能となり、より現実世界と情報世界がリンクされるようにもなります。

非中央集権のブロックチェーンプロトコルを用いることで、私たちが当然のように享受している現実世界の前提条件を、インターネットの世界に組み込むことができる、これがWeb3.0の構想です。
本書より引用

また、Web2.0で問題となっていた一部の中央管理者による広告モデルに関しては、BAT(Basic Attention Token)を用いて広告表示にインセンティブを付けたりブロック機能で広告を排除する事が出来るブロックチェーンWebブラウザ「Brave」や、広告によるマネタイズではなく、トークンを用いてコンテンツクリエイターやそれを閲覧するユーザーに金銭的インセンティブを与える「Steemit」などが存在しています。

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森川氏の考える分散型アプリケーション(Dapps)の可能性

ブロックチェーン技術を用いた分散型アプリケーション(Dapps)は既存のオンラインアプリケーションの代案とされており、これが「アプリケーション3.0」と呼ばれています。

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そもそも既存のアプリケーションはそのインフラやプログラムを事業者が自前で揃えて維持する必要があり、ユーザーはそこへアクセスすると情報は全てアプリ提供者の元へと渡る事となります。
そしてアプリ管理者はサービス提供にかかるコストをペイする為にサービス内に高校を表示したり利用料を徴収したりしてマネタイズしています。
しかし、このモデルではユーザーの求めていない要素(広告表示)も組み込まれてしまうのです。

ですが、Dappsの場合はそのシステムとは違っており、根本的なシステムは全てブロックチェーン上に置かれます。
これによって開発者が都合よくブロックチェーン上の出来事に介入する事は不可能となり、当然改ざんも出来ません。
なので、外部からの攻撃を防ぐ為のコストとそのリスクを大幅に削減する事が可能となり、低コストでシステムの運用が出来るようになるのです。

また、Dappsでは中央管理者不在で一部の管理者が情報を握るような事はありません。

ユーザーがDappsを利用する際に生まれる情報は、「ユーザーだけしか知り得ない情報」か「ブロックチェーン上で誰でも確認できる情報」の2つしかなく、サービス提供者が一方的に利用できる情報はありません。
本書より引用

これによってユーザーの情報を用いてビジネス展開する事が不可能となり、大抵の情報はパブリックに誰でも確認出来るようになります。

Dappsは、そのネットワークを健全に発展させる事がインセンティブとなり、情報の独占によるマネタイズは行えなくなるのです。

ブロックチェーンの実用化はいつになるのか

森川氏は、「今後実態の伴わない仮想通貨やブロックチェーンプロジェクトのバブル状態は減り、現実の世界で用いられる本当に価値のあるものだけが生き残る」と主張しており、現実はコア開発者層と一般に利用されるサービスを開発する層との間に乖離があると見ています。

世の中を大きく変えるポテンシャルを秘めた技術が普及するには、ゼロベースで基礎研究を積み上げていかなければなりません。
本書より引用

そして、今はブロックチェーンが抱えている数々の課題を1つずつ解消していくフェーズだとされており、開発側にとっては現在より現実的で厳しい時期を迎えていると言えるでしょう。

なお、ブロックチェーンを取り巻く環境でにおける課題としては「ユーザーのリテラシー」「仮想通貨の高いボラティリティ」「アンバランスな規制」「スケーラビリティ問題」などが主に上がっており、それらを1ずつ解消していくとなると直ぐに実用化されるのは難しいと言えるでしょう。

本書のまとめ:ブロックチェーンは常識を変える「ルール・ドリブン」

本書の終章ではブロックチェーン技術の本質に関する森川氏の見解が述べられており、その本質はこれまでのルールの在り方を変えてしまう「ルール・ドリブン」であると主張されています。
既存の「ルール」は既に集まった共同体に対してその組織を最適化する為に用いられるものであり、そのルールは後から作られるものでした。

しかし、ブロックチェーンが創り上げる共同体ではまず先にプロトコルによってルールが整備され、その後に共感する人が集まります。

中央集権的な管理者が不在の為、プロトコルによって定められたルールが先に作られ、ユーザーはそれに従う事が前提となるのです。
そして、そのルールに基づき独自のトークンが発行・流通するようになり、そのコミュニティの価値や自分の貢献度などが全て可視化されるようになります。

今後ブロックチェーンが発展し、ルールの提唱と実現が当たり前のものになってくれば「自分がどのルールに従い、どの共同体に属するか」が問題になってくるでしょう。
本書より引用

このように、コードによるルールが主体となり、今までの共同体とは全く異なった「常識」「コミュニティ」がブロックチェーンによって作られるかもしれません。

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Kenta Fujii
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新卒で入社した大手金融機関では、主に広告の運用やマーケティングに従事。その後は11ヶ月で退職し、金融・フィンテック分野に特化したフリーライターとして活動中。
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