ブロックチェーン

ブロックチェーンを活用した仮想国家エストニアの電子政府や電子国民の未来

ブロックチェーンを活用した仮想国家「エストニア」

革新的技術であるブロックチェーンは、現在あらゆる国や企業でその活用方法が模索されていますが、その応用を世界のどこよりも早く進めている国があります。
それが北欧に位置する電子国家「エストニア」です。

エストニアは「デジタル・ガバメント」と呼ばれる電子政府の仕組みを築いており、そのあらゆる設計がインターネットをベースにして描かれている「デジタル・ネイティブ」な仮想国家と化しています。

本記事では、そんな仮想国家エストニアのブロックチェーンを用いた国家戦略や今後のビジョンについてを解説していきます。

IT先進国であるエストニアとは?その国の特徴

エストニアの基本的な概要

そもそもエストニアとは、北欧に位置するバルト三国の一国であり、人口134万人で国の面積はおよそ4,5万キロ平方メートルと日本の9分の1程度の大きさの国です。


引用:Googleマップ

なお、エストニアは報道が自由な国であり、早期のIT教育や国際学力等は調査上欧州の中でも上位として知られています。

エストニアはSkypeを産んだ国


また、エストニアは通話・メッセージングサービスを手掛けるSkype(スカイプ)を産んだ国としても有名です。

Skypeはブロックチェーン技術で活用されているP2Pの仕組みが用いられており、後にマイクロソフトに買収されました。

そしてエストニアはこのSkypeから始まったと言っても過言ではありません。

なぜならSkypeによってエストニアから世界的に成功を収める経験を持ったからであり、その後のデジタル国家の知名度にも貢献しているからです。

国の問題をデジタル化によって大きな強みに変えたエストニア

では、なぜエストニアがデジタル国家と呼ばれるようになったのでしょうか?
エストニアは1991年にソビエト連邦から独立しており、そんな国家の背景には小さな面積と少数の人口しかいない国であるが為の労働不足の維持という問題がありました。

現在こそエストニアはIT先進国と言われているものの、人口の不足や、領土占領の問題があったので、IT化による行政効率化のインセンティブがどこよりも強かったのです。

このように、エストニアは国が抱える大きな問題を「デジタル国家」として存続させていく事で大きな強みに変えたのです。

日本もこれからの未来を考える上でエストニアを参考にするべきかもしれませんね。

また、ソビエト連邦から独立した1991年にはインターネットが存在していた為に、エストニア国家はインターネットベースで国を設計した事から世界最先端の電子国家と当時から形容されるようになりました。

そして現在はブロックチェーン技術などを駆使し、全行政サービスのうち行政や医療、会社登記といった99%が電子化しており全てオンライン完結すると言われています。

残りの1%の部分に当たる婚姻契約や不動産取引はまだ電子化が進んでいないみたいですが、いずれブロックチェーンによるスマートコントラクトによってオンラインで完結できるようになると予想出来ます。

国そのものがスタートアップであるエストニア

そんなエストニアは「起業家精神の溢れる国」として有名であり、多くのメディアでそのような取り上げ方をされています。

エストニアは人口当たりの企業率やスタートアップ数が高い事が特徴ですが、そもそも国そのものがスタートアップ企業のようになっています。

人口およそ130万人という少数精鋭の国である事から、民間企業と協力して作り上げられたエストニアはどこの国よりもスタートアップ気質であると言え、その首都タリンでは外国人起業家の誘致の為に数多くのスタートアップピッチが行われています。

エストニアの電子政府と電子国民の仕組み


引用:https://e-resident.gov.ee/

ペーパーレスの電子政府

エストニア政府は「ペーパーレス・エストニア」の方針の下で電子記録管理の導入に取り組んでおり、政府内ではほとんど紙の文書が出回ることはありません。

政府がペーパーレスになる事によって、閣議などの関係者はサーバーにアップされた資料を即座に確認する事ができ、国外からでもインターネットを利用して参加する事が出来ます。
なお、これによって政府は「電子閣議」をベースとし、紙のコピー費用を年間19万ユーロ削減しているのです。

また、それ以外にもIDを用いた電子投票やデジタル署名なども行われており、国民や企業のKYCの手続きも簡略化させました。

エストニアを支える根幹技術「X-Road」

そして、現在エストニアの電子政府の基盤となっている技術が「X-Road」と呼ばれる分散型データベースであり、これによって国内の行政サービスが効率化されてます。

X-Roadはまだ世の中に「ブロックチェーン」というワードが存在しなかった2001年に生まれている分散化されたデータベースなのですが、サーバーを分散化させる事で高いセキュリティ性を維持しながらあらゆるデータ連携を実行する事が出来るのです。

なお、これによって国民は自分のIDを用いる事で役所手続きといったあらゆる記録にログインしてそのまま処理をする事も可能です。
実際にエストニア国民は住民票をインターネット上で取得する事が出来るんですね。

また、X-Roadは900以上にも及ぶエストニアの行政機関や民間企業によって活用されている事から、今やエストニアを支える根幹技術となっています。

ブロックチェーンを導入するエストニア政府

しかし、エストニアは10年前に、国家規模とも言われる大規模なサイバー攻撃に遭った過去があります。
このようなサイバー攻撃は、今後デジタルガバメントを構築する国にとって脅威とも言える存在でしょう。
そこで政府はそのインフラを強化する為に、既存のX-Roadと同時にブロックチェーン技術の導入を促進しました。

現在エストニアの電子サービスの基盤となっている技術はX-Roadですが、政府はブロックチェーンによる運用テストを2008年から開始しており、2012年以降は一部の登録に関するオペレーションで活用されています。

またエストニアは世界最大のブロックチェーン企業と言われているGuardtime社と深く関わっており、政府は同社が提供する「KSIブロックチェーン」と呼ばれるシステムを採用しています。


引用:Guardtime

KSIブロックチェーンはデジタル署名の際の署名作成時には暗号鍵を使用し、検証時には暗号鍵を使用しない仕組みとなっており、このKSIブロックチェーンによって短時間での合意形成や高度なセキュリティを実現出来ます。

また、エストニア政府は他にも様々なブロックチェーン企業と組む事でブロックチェーンの活用拡大を図っています。

e-Residency(イーレジデンシー)による電子国民の増加


引用:https://e-resident.gov.ee/

エストニアでは「e-Residencyプログラム」と呼ばれる、インターネット上でエストニアの電子住民になる事が出来るIDカードの発行を進めています。

これは2014年からスタートしており、エストニアの非居住者はIDを発行する事でエストニア内での会社登記や銀行サービスなどを全てオンラインで行えるようになるのです。

なお、その発行費用は100ユーロとされており、手続きをネット上で済ませれば自国のエストニア大使館でIDカードの受け取りが出来る仕組みとなっています。

また、e-Residencyの公式サイトはユーザーインターフェイスに優れたデザインとなっており、日本の行政サービスのサイトと比較してみても格段に見やすくなっています。


引用:https://e-resident.gov.ee/

何度も述べているように、国の物理的な面積が小さく、人口もおよそ130万人と少数なエストニア。
しかし、インターネット上であればその物理的な国の面積に関係なく「仮想国民」を無数に増やす事が出来ます。

このように、インターネット上に多くの電子住民を増やす事こそがエストニア政府の施策なのです。

国家でICOを計画し独自の仮想通貨を構想したエストコイン(estcoin)のその後


エストニアでは昨年8月に国家規模のICOを構想しており、独自の仮想通貨である「エストコイン(estcoin)」の発行を検討していました。

このICOではエストコインを基盤としたデジタルコミュニティの形成や、エストコインを用いて電子住民がオンライン上での取引出来るサービスインフラ創造が掲げられていたのですが、現在はその計画が後退しているエストコインの実現化が遠退く形となってしまいました。

以前、エストコインはユーロに固定されたトークンとして形成するとされていましたが、昨年9月にユーロ加盟国は欧州中央銀行のドラギ総裁によっていずれも自国の通貨を作り出す事は出来ないと発表されました。

なので、エストニアではユーロと等価交換が可能なペッグ通貨を作成する事が不可能となり、電子居住者のコミュニティ内でのみ利用出来る支払い手段として開発される方向となっています。

よって、エストコインは今後一般の取引所に上場されて売買されるような通貨とはなり得ず、ユーロとペッグされた仮想通貨とはならないでしょう。

仮想国家エストニアの将来のビジョンは?


以上、エストニアはビットコインが誕生する前から分散型サーバーを用いたデジタル国家を形成していました。
そんなエストニアは既存の先進国とは異なり、インフラが整備されていなかった事によるアドバンテージが非常に高い国です。

国の面積が小さく人口が少ないからこそデジタル化するインセンティブが大きくあり、インターネット内で政府や国民を構築していれば物理的に国の領土が無くなってもデジタルの世界で国を存続させる事が出来るのです。

日本の10年先を行っていると言われているエストニアですが、更に今後は365日有効な「デジタルノマドビザ」の発行を構想しています。

デジタルノマドビザは働く場所を選ばないノマドワーカーに向けて発行するビザだと構想されており、これが普及する事でエストニアの「デジタル国家」に関心のある多くのデジタルノマドや起業家が集まる事も予想出来ます。

また、e-Residencyによる電子住民権を所有する非居住者は会社登記や現地の銀行口座の利用も行えると上述しましたが、これらが合わさる事によって国境を超えるという概念が変わり、「国民のグローバル化」と「仮想国民」と言った新しい概念がグローバルに広まっていく事でしょう。

今後、エストニアがブロックチェーンを用いた新しい「国家」のカタチを世界中に披露していけるか非常に楽しみです。

ABOUT ME
Kenta@フリーライター
Kenta@フリーライター
新卒で入社した大手金融機関を11ヶ月で退職し、仮想通貨・ブロックチェーンに特化したフリーライターとして活動中。現在は場所を選ばず住所不定の”Decentralized”な生活を満喫している。