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仮想通貨の次の資金調達STO(セキュリティトークンオファリング)とは?ICOとの違いを解説

仮想通貨の次世代資金調達「STO(セキュリティトークンオファリング)」とは?

STO(セキュリティトークンオファリング)とは、一言で言うと証券型トークン(Security Token)の新規公開(offering)です。

セキュリティトークンとは株や社債、投資信託などといった有価証券をブロックチェーン上でトークン化したものであり、実物資産の裏付けがあり各国の証券法に準拠した形で発行されます。

つまり、STOでは従来型の証券に準じた規則でトークンを売り出す事となるのです。

最近このSTOによる資金調達方法が注目されるようになっているのですが、以下よりその中身を見ていきましょう。

STO(セキュリティトークンオファリング)では株や社債、投資信託などといった有価証券に準じたトークンが発行され売り出される。

 

既存のICOの現状と問題点


2017年から空前の盛り上がりを魅せたICO市場ですが、そのICOによる調達額は2017年が50億ドル(約5,500億円)、そして2018年現在は140億ドル(約1.5兆円)にも及んでいます。


引用:coindesk

しかし、蓋を開けてみるとICOプロジェクト全体の80%が詐欺であるという調査結果が出ており、その中で生き残っているICOトークンはわずか8%程となっています。


引用:Satis Grooup公式ブログ

このように、詐欺が大半のICOにおいて、プロジェクト側の調達する資金とは反対に、騙されて(もしくはプロジェクトの失敗によって)お金を溶かしてしまう投資家も存在していたのです。

このような現状から、ICOに関する規制の枠組みについて世界各国で議論されるようになりました。

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アメリカでは米証券取引委員会(SEC)がしばらく前に「ICOトークンは証券である」という見解を示しました。

そして、日本ではICOトークンを売り出すを際には仮想通貨交換業者への登録が必要となり、それに伴い海外法人も日本で交換業登録を済ましていなければICOトークンを日本居住者へ販売する事が出来なくなっています。

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「規制を設けなければ滅びてしまう」ということに気づいた各国の当局は、どんどんと野放しにされていたICO市場を規制で取り締まっているのです。

そしてそれと同時に、2018年8月のICOによる資金調達額は3.2億ドルと、昨年6月以降からの最低額となりました。

ICOプロジェクトは全体の80%が詐欺であるという調査結果が出ており、その中で生き残っているICOトークンもわずか8%程となっている。

 

STO(セキュリティトークンオファリング)の特徴

上述したICOでは規制の枠組みが整っていない事から、一瞬で莫大な市場規模となったのと同時に多くの投資家が詐欺被害に遇いました。
そこで、ブロックチェーン上のトークンという特性を活かしつつ、既存のICOの問題を解決した資金調達チャネルがこのSTOです。

有価証券に準拠したトークン

 

STOは上述した通り、発行体が生み出すトークンに有価証券の性質がある為に、投資家はそのトークンの価値に対する権利を主張する事が出来ます。

セキュリティトークンの明確な定義は恐らくまだ定まってはいませんが、有価証券の一般的な定義は「その所有者の財産権を証明する証書」だと言えます。

なので、必然的にそのトークンは発行体の企業が持つ資産に裏付けられた形で発行されるようになり、既存の株式と同様に配当を受けられる権利なども付随させる事が可能となるでしょう。

金融商品取引法の規制を受けるようになる

 

なお、STOは有価証券に準拠する為に金融商品取引法(証券取引法)の規制を受けるようになります。

これによって、以前の法があるのか無いのか曖昧なICOとは違い、ガチガチに定められている規制の下でトークンを発行して販売していく事となります。

なお、有価証券の定義を定める為の判例に「Howey Test」と呼ばれるテストがありますが、それによると、以下の要件が満たされる場合は証券(Security)とみなされる事となっています。

  1. 投資家は金銭を投資していること
  2. 投資家は投資に対する利益の期待があること
  3. 金銭の投資先が企業であること
  4. 全ての利益はプロモーターや第三者によって生み出されるものであること

以上の4つが当てはまれば「有価証券」と判定する事が出来るのですが、米証券取引委員会(SEC)では昨年自律分散型ファンドである「THE DAO」を有価証券と認定し、その後も企業が発行するICOトークンを証券と定めました。

STOでも同様に予め証券取引法に準じたトークンを発行する事で、規制にのっとった形での資金調達が前提となるのです。

STOは有価証券に準拠し、証券取引法の規制を受ける形となる。

 

STO(セキュリティトークンオファリング)のメリットとICOとの違い

では、STOとICOとの違いを踏まえ、STOで資金調達する事のメリットを考えていきます。

STOは価値の裏付けがあり、その権利を主張する事ができる

 

STOは有価証券に属する為に、しっかりとした価値の裏付けがあり、その権利を主張する事が出来るようになります。

既存のICOでは、WEBサイト上で発行されたホワイトペーパー1枚と、紹介されている開発チームやロードマップなどの信頼のみで投資する必要があり、そこに価値の裏付けなどはありません。

なお、そもそもICOはトークンの保有に対しての権利主張が出来ず、発行体も事実上何らかの責任を負う事は無いのです。

このように、既存のICOでは投資家保護が十分とは言えず、投資家にとっては大きなリスクが付きまとっていたのですが、今回生まれたSTOの新たな仕組みによって投資家保護の確立を図る事が出来ます。

予め規制に準じた形でプロジェクトを行う事が出来る

 

STOによるトークン販売を行うことによって、企業はICOよりも低い法的リスクで資金調達する事が出来るようになります。

そもそも上述したように、日本でもアメリカでもほぼICOでトークンを発行する事は不可能に近くはなっていますが、STOでは予め定められた規則に沿ったトークン販売が可能となるんですね。

昨今のICOは本物と詐欺が乱立している中で、投資家にとっては資金を溶かしてしまう懸念があり、反対に発行体にとっても自社のトークン販売を詐欺と混合されては困ります。

よって、規則に沿ったトークン販売は投資家と発行体企業の双方にメリットをもたらす事となるでしょう。

やはり、規制を設けなければ滅びてしまいます。

STOは発行体の法的リスクを抑え、投資家の投資家保護を確立させる。

 

STO(セキュリティトークンオファリング)を実施・検討している企業

では、実際にSTOを実施もしくは検討をしている企業の例を紹介していきます。

企業の収益を配当として受け取る事が出来るFINOM(フィノム)


引用:FINOM

FINOM(フィノム)とはスイスに本社を置くブロックチェーン企業であり、「NOM」と呼ばれるユーティリティートークンと「FIN」と呼ばれるセキュリティトークンの2つを発行しています。

そして同社は昨年の11月からセキュリティトークンであるFINを実際に売り出し、およそ4,000万ドルを調達したのですね。

このFINトークンの保有者は同社の生み出す収益の20%までを四半期毎に配当で受け取る権利を持つ事ができ、その配当額は取締役会によって決定されます。

FINOMの開発サイドはFINトークンを「米国の規制に準拠した最初の証券型トークンである」と主張しており、次世代のトークンモデルに一早く乗り出したことで一躍話題となりました。

 デジタルアセットを活用した資金調達を検討するSBIホールディングス

 

日本の大手金融機関であるSBIホールディングスは2018年6月の経営近況報告会にて、有価証券に準じたトークン発行による資金調達についてを発表しました。


引用:SBIグループ 経営近況報告会説明資料

上記の説明資料の②「Asset-backed token」では、発行体のアセットに裏付けらた発行体の価値と連動するトークンの設計が構想されていますが、これはSTOに近い形での資金調達となる事が予想されます。

同説明資料では「Tokenizad Asset Offering(TAO)」と書かれていますが、概ねその概念や方向性はSTOと同じでしょう。

このSBIホールディングスによるデジタルアセット活用の資金調達が実現すれば、企業の資金調達のロールモデルとなる可能性も高くあります。

しかし、同社は現時点で会計処理や法令の基づいた業登録の面での検討事項が多く課題があるとの事であり、関係当局と協議しつつ資金調達の検討を進めています。

STO(セキュリティトークンオファリング)は今後ICOの代案となるか

要点まとめ
  • STO(セキュリティトークンオファリング)では株や社債、投資信託などといった有価証券に準じたトークンが発行され売り出される。
  • ICOプロジェクトは全体の80%が詐欺であるという調査結果が出ており、その中で生き残っているICOトークンもわずか8%程となっている。
  • STOは有価証券に準拠し証券取引法の規制を受ける形となるので、発行体の法的リスクを抑え、投資家の投資家保護を確立させる。

以上がSTOについてでしたが、STOはレギュレーション関係以外にもブロックチェーン上でのトークン発行によるコスト削減といったメリットにも期待出来るでしょう。

なお、企業は株式以外にも様々な資産をトークン化して売り出す事が可能ともなり、その可能性は広がるばかりです。

先日、大和証券が株式売買にブロックチェーンを導入した実証実験を行いましたが、今後ICOの代案として、このSTOが各企業間で注目されるようになるでしょう。

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Kenta Fujii
Kenta Fujii
新卒で入社した大手金融機関では、主に広告の運用やマーケティングに従事。その後は11ヶ月で退職し、金融・フィンテック分野に特化したフリーライターとして活動中。