仮想通貨

仮想通貨を使った資金調達「ICO」とは。ベンチャー投資が民主化へ

ICO(Initial Coin Offering)とは何か

昨今、ICOという仮想通貨を使った資金調達の方法が一大ブームとなっており、聞いたことのないベンチャー企業や突如現れたプロジェクトチームが、わずか数枚の企画書で億単位の資金を簡単に集められるようになりました。

そんな「ICO」とは一体何なのでしょうか?

教科書的に言うと「ある企業やプロジェクトが独自の仮想通貨をネット上で発行し、投資家に販売することで資金調達をする方法」なのですが、この方法が既存の企業の資金調達のオルタナティブとして話題を呼んでいます。

簡単なプロセスの説明ですが、まず「ホワイトペーパー」と呼ばれる企画書を発行し、投資家に向けてプロジェクトをアナウンスします。

その後プレセールと呼ばれる投資家へのICOトークの先行販売を行い、トークンをディスカウントして販売した後に本販売のクラウドセールが行われます。

そして最後にホワイトペーパーに記載されているプロジェクトが実行されます。

このように、「企画書を作ってトークンを購入してもらい、お金が集まったらプロジェクトを実行する。」というのがICOの基本的なプロセスなのです。

売り手のメリット・デメリット

ICOで資金調達をする側のメリットとしては主に「コスト面・誰でもトークンが発行が可能・グローバルな資金調達・プロモーション」の4つが考えられます。

コストが削減できる

IPOによる既存の証券会社が通るプロセスをショートカットするので、売り手は仲介会社に払うコストをカットできます。

ベンチャー企業でも個人でもトークンの発行が可能

既存のIPOのように基盤がしっかりして、厳しい審査に通った企業しか上場できないわけではなく、ホワイトペーパーをベースにしたアイデアで資金調達を成功させられる可能性があります。

世界中の誰からでも投資を受けられる

ICOはグローバルに誰からでも資金調達をすることが実質可能です。

つまり、リスクの取り方や受け入れ方は世界によって様々ですから、投資をしてくれる人が世界に広がるということはそれだけリスクマネーも集まる可能性が広がるということなのです。

SNSでのPRがしやすい

さらに、SNSや広告を使ってICOプロジェクトをしやすい特徴もあります。

投資家側もそのICOのトークンを持つことで、価値が上がって欲しいと思っているので、SNS等で拡散してPRするインセンティブがあるのです。

しかし、メリットとは反対に投資家の匿名性が高く、どんな人に投資されているのかが不明確なところがデメリットです。プロジェクト側の意図しない不適切なユーザーにトークンを購入されて、SNSで意図しないようなPRをされる可能性もあります。

互いに価値が下がるようなことをすると、皆が損をしてしまうので悪いことは書かないでしょうが、ユーザーそれぞれの言葉のニュアンスの違いによって表現が不適切になってしまったりすることも考えられます。

その点、IPOでは法律でガチガチに固められて安全性が高く、プロのベンチャーキャピタリストが投資をしているので、投資家のパートナーとしての信頼も備わっているのです。

買い手のメリット・デメリット

ICOに投資する側のメリットは「少額からの投資・グローバルな投資・保有トークンのプロモーション」の3つが考えられます。

ベンチャー企業に少額で投資ができる

ICOでは少額で色々な世界中のプロジェクトやベンチャー企業に投資をすることが可能です。今まで投資のハードルが高かった企業への投資も簡単になるので、まさに「ベンチャー投資の民主化」時代の幕開けですね。

グローバルに投資をすることができる

ここが投資家の一番のメリットだと筆者は考えています。なぜなら、将来ユニコーン企業となる可能性があるブロックチェーンベンチャー等に気軽に投資できるからです。

日本以外に魅力のある企業やプロジェクトは数多くあるでしょうが、投資のハードルが一段と下がることによって選択肢はグローバルに広がります。

SNSで自分の保有トークンのPRがしやすい

売り手同様、個人もSNSを使って保有トークンのPRがしやすくなり、それによってトークンを紹介することで、値上がりのインセンティブが個人にも働くのです。

しかしデメリットとしては、グローバルに投資できる反面、それだけ失敗する可能性も上がるという点です。そもそも、ICOは既存の厳しい上場審査の無いベンチャー企業への投資ですから、リスクは相応に高く付きまといます。

さらに、SNSでのPRもその後、価格が急な値下がりをした時に、文句を言わたりして自分の信用を下げてしまう可能性があるのです。

投資は自己責任ですが、上記のようにちょっとしたトラブルにもなりかねません。

IPO(Initial Public Offering)との違い

ICOというネーミングは、既存の株式市場から資金調達をするIPO(新規株式公開)から来ています。そんなIPOとの違いですが、似た部分もありながらも根本的に違っている部分もあるのです。

まず、IPOでは「株式」を発行しますがICOでは「仮想通貨トークン」を発行します。それによって、まず配当の有無で違いが生まれます。

株式の場合は、会社が得た利益を株主に分配する必要がありますが、ICOでは利益の配当などする必要がありません。さらに、ICOではその企業の議決権に直接影響が出ないのです。

なぜなら、仮想通貨トークンは「株式」ではないからです。つまり、ICOでは社長の株式の持分割合を減らさずに資金調達をすることができるのです。

逆に投資家目線で見ると、ICOトークンを保有する者は特に会社の議決権を手にできるわけでもないのです。

過去に行われた日本のICO「ALIS」

日本で成功したICOの事例の一つとして、ソーシャルメディア3.0の呼び声高い「ALIS」というプロジェクトがあります。

ALISとは日本発の分散型ソーシャルメディアプラットフォームであり、投稿したコンテンツにユーザーの指示が集まるとコンテンツのクリエイターにトークンで報酬が支払われ、また、信頼できるコンテンツを指示したユーザーにもトークンが支払われるような仕組みのサービスです。

まさに既存の広告マネタイズや、信頼に欠けるコンテンツの大量生産を排除する新しいプロジェクトなのです。そして、このALISプロジェクトはなんとわずか4分で1億円を調達しました。

そんな革新的なプロジェクトのALISですが、既にネットで信頼を得ているインフルエンサーの投稿した記事に報酬が集まってしまうのではないかというのが筆者の見解です。

なぜなら、信頼のあるメディアは既に信頼を持っている人が作る方が簡単だからです。

多くのコンテンツクリエイターや読み手のユーザーにとって、とても楽しみなサービスとなるでしょうが、期待値が上回って終わるのか、今の期待値以上に盛り上がるのかはわかりません。

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過去に成功した海外のICO「Brave」

ブラウザの開発企業「Brave」はICOによってわずか24秒で3,500万ドルの資金調達に成功し、そのスピードには度肝を抜かれました。

このBraveはブラウザ開発企業なのですが、ネット広告をブロックチェーンによって最適化しようというプロジェクトでした。Braveのブラウザを使うユーザーは、そのブラウザ場で広告を見るとトークンが手に入る仕組みです。

広告はユーザーから嫌がられるもので、それもサイトの表示速度まで下げてしまい、ユーザーにとって必ずしも快いものではありません。

しかし、Braveではユーザーに広告主の出稿する広告を見てもらうインセンティブを、トークンによって与えることができるのです。

しかし、本質はユーザーそれぞれに対する「ターゲティング」ではないかと筆者は考えており、その辺りをトークンも付与しながら並行して、広告の最適化へ進めていくべきではないでしょうか。

Braveは広告界の王者Googleに勝つことができるのか、こちらも将来が楽しみですね。

ICOに参加する上での注意点

今日のICOは、もちろん良い話しばかりではありません。残念ながら実際にICOプロジェクトをネット上で公開し、集めた資金をそのまま持ち逃げするといったケースもあるのです。

今、数多く生まれているICOの大半が「詐欺なのか」という疑問はさて置き、将来、生き残るプロジェクトがどれだけあるかを考えれば、ほとんどのICO案件が将来無価値になって消えるというのは簡単に分かることです。

なぜなら、そもそも既存の株式会社は新しく設立されてはすぐに消えてなくなっているからです。

創業後10年続く立派な会社は、全体の中でたった5%程の割合ですから、当然このICOでも本物となるプロジェクトはそれくらいの確率であるということを覚悟しておく必要があるでしょう。

ICOへの投資は、個人がベンチャーキャピタリストとなるということです。

プロのベンチャーキャピタリストは毎日額に汗を流しながら投資先を見極め、その中から絞りに絞り厳選されたベンチャー企業に投資しても、その内のわずかしかエグジット(上場or売却)させることができないのです。

そして、そんな大変なことを個人がやろうとすれば、それは相当な目利きが必要なのです。そのような投資のプロセスを知らずに、雰囲気だけイケてそうなICOプロジェクトにむやみに投資しても簡単に成功するはずがありません。

この辺りは、まだしっかりとした規制が無いので無法地帯なのですが、どんなプロジェクトでもICOでトークンを発行できるので、数が増えて当たる確率も相対的に下がってしまうのです。

そして、上手い儲け話は一般の手にはそう簡単に渡らないのも事実です。

「ICOで確実に儲けられる」

このような誇大広告を見たら、疑問に思わなければいけません。なぜ、見ず知らずの第三者をわざわざお金持ちにさせる必要があるのだろうかと。

誰も黄金の卵を産むガチョウの居場所を簡単に教えてくれるはずがないのです。

ICOは資金調達のオルタナティブとなるか

ICOの魅力は、世界中の資本が仮想通貨トークンをベースに国境を超えて飛び交うようになることだと筆者は考えています。

そして仮想通貨やそれをベースにしたICOは、今までに無い「大きな繋がり」を作る可能性を持っているのです。

これはどういうことかというと、インターネットによって情報の繋がりが世界中で作られたように、今度は世界中の「マネー」という価値が繋がる可能性を秘めているのです。

例えば、今までは企業にとってはリスクマネーの供給者がほぼ金融機関だったのですが、それがICOによってリスクマネーの供給者が世界中の投資家となり、スタートアップ企業と世界中の投資家が「繋がる」ことができるのです。

しかし、これだけ可能性を秘めた資金調達方法ではありますが、無法地帯であるが故にICOが詐欺扱いされて淘汰されるのは非常に勿体無い話なのです。

そのため、詐欺を撲滅してしっかりとプロジェクトや企業を精査し、本物の「ICO」を創る為のプラットフォームが世界中で必要です。

ここまでを見ると、なぜ既存の株式市場が法でしっかりと縛られているのかが見えてきますね。ICOは「無法地帯で儲かる反面詐欺もあって、全損するリスクもある」ようなことでは駄目なのです。

これから日本が健全な仮想通貨市場を主導していく為には、この新しいICOという発想をどう見るかが鍵になるでしょう。

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