本記事では、仮想通貨のマイニング事業を行う「SBI Crypto」についてや、SBIホールディングスの北尾社長の話す今後のビットコインキャッシュのマイニングについても紹介していきます。
目次
仮想通貨のマイニング事業を行なっている「SBI Crypto」とは?
日本の大手総合金融機関である「SBIホールディングス」は、2017年8月にマイニング事業を手掛ける「SBI Crypto」を設立しました。
SBI Cryptoとは、主にビットコインキャッシュを中心に海外でマイニングを行うSBIホールディングスの子会社であり、2018年1月より米国のバージニア州で、そして2018年7月よりスウェーデンにてマイニング事業を開始しています。
なお、上記のSBIホールディングスの決算説明会資料を見てもわかる通り、SBI Cryptoは最終的にビットコインキャッシュ(BCH)のマイニングシェア3割の獲得を目指すとしており、今後への更なる期待が集まっています。
SBI北尾社長によるビットコインキャッシュ(BCH)のマイニングについての表明
SBIホールディングスの代表取締役社長である北尾氏は、2018年11月に開催された同社のインフォメーションミーティングにて、今後のビットコインキャッシュのマイニングについてや、2018年11月16日に起こったビットコインキャッシュのハードフォークによる分裂問題についてを力強く語っていました。
今回のビットコインキャッシュのハードフォークは「大義名分無し」
ビットコインキャッシュは、元々更なる機能改善の為のアップデートが予定されていたのですが、そのアップデート案を巡って主要なソフトウェアである「BitcoinABC」と「BitcoinSV」とが対立することとなりました。
その対立は仮想通貨市場全体を混乱に招く程の事態となり、「どちらが本物のビットコインキャッシュか」を決める為の「ハッシュ・ウォー」がしばらく続いたのです。
そしてそのハッシュウォーによる争いの末、ハードフォークによってビットコインキャッシュから新しく「BitcoinSV」が誕生したのですが、それについて北尾氏は以下のように発言しました。
「今回の分裂は大義名分無し」
「これは欲とエゴの結果二つに分かれた。」
「結果、全部の仮想通貨の足を引っ張るに至った。」
そもそもビットコインキャッシュは2017年8月にビットコインから分裂して誕生しましたが、それは「ブロックサイズを上げて取引処理を向上させる」という意図があり、北尾氏はそれに関して「大義名分がある」と主張していました。
しかし、今回のハードフォークに関しては「大義名分無し」と発言し、この分裂が「仮想通貨市場の全ての足を引っ張る事となった」と断言したのです。
ビットコインやビットコインキャッシュは「保有構造」に問題がある
このような問題を招いてしまった事に関して、北尾氏はその「保有構造」に問題があると言います。
そもそもビットコインを大量に保有しているのは依然変わらず「中国勢」だとされており、中国では産業用電力が割引される為、中国のマイナーは初期に大量のマイニングを行なっていました。
「その保有構造は、7割以上中国勢が持っているわけです。」
さらに、その大量にビットコインを保有している中国勢のうちの大半は比較的「若い層」であると北尾氏は発言し、その若者層の「欲」を持った保有が、仮想通貨市場の混乱を招く結果となってしまったのだとも指摘しました。
「(ビットコインを保有しているのは)若い連中なんですよ、みんな。」
「エゴと欲でさらに儲けたいと。」「こうなってきたからおかしくなったんです。」
ハードフォークを行う事で、ゼロから一夜にして億単位のお金が動く事はもはや当たり前となり、2017年や2018年は、多くの開発者によってたくさんのハードフォークコインが生み出されたのです。
しかし、このような状態が仮想通貨市場の健全な発展の妨げとなる事を北尾氏は指摘しています。
ビットコインキャッシュのマイニングシェアを30%取って保有構造を変える
「そういう状況に対して、3割以上のマイニングシェアを取って保有構造を変えたい。」
そこで北尾氏は、仮想通貨市場とデジタルアセットの健全化を促進するべく、3割以上のビットコインキャッシュのマイニングシェアを取って保有構造を変革する旨を主張しました。
「デジタルアセット自体は非常に素晴らしいものだ。」
「そして、実需を創りたい。」
ビットコインやビットコインキャッシュに採用されている「Proof of work(PoW)」にて、仮に一部のマイナーがその通貨のネットワークの大半を握るようになった場合、「51%攻撃」のリスクが高まります。
なので、そのようなリスクを回避し、仮想通貨の実需を生む為にも北尾氏はビットコインキャッシュの「30%以上のマイニングシェアを獲得する」と意気込んでいるのです。
なお、北尾氏は自身が手掛けた著書である「これから仮想通貨の大躍進が始まる!」でも自身の今後の仮想通貨に対する見解を述べているので、気になる方はチェックしてみてください。
↓「これから仮想通貨の大躍進が始まる!」の要約はこちら!
SBICryptoによるビットコインキャッシュ(BCH)のマイニングシェアは?
執筆時点で直近となる2018年12月18〜24日までのビットコインキャッシュのマイニングシェアを見ると以下の図の通り、「ViaBTC」がおよそ19%、マイニング大手であるBitmain傘下の「BTC.com」がおよそ18%、さらにロジャー・バー氏の率いる「Bitcoin.com」がおよそ11%のシェアを占めている事が分かります。
引用:CoinDance
よって、現在ビットコインキャッシュにおけるSBICryptoのマイニングシェアはほとんど無いのが現状です。
なお、SBICryptoによるビットコインキャッシュのマイニングシェアは2018年4月19日時点で5.6%に達していたとされました。
しかし、ビットコインキャッシュのマイニングシェアの推移を確認してみると、その後SBICryptoは、2018年9月中旬以降マイニングシェアが0%で推移していることが分かります。
引用:CoinDance
これに関しては、2018年9月以降ビットコインキャッシュの価格が全体の市場と共に右肩下がりに低迷していった事から、マイニングの収益性が落ちた事によるマイニングの一時的な停止などといった理由が考えられます。
なお、2018年11月16日のハードフォーク以降はビットコイン、ビットコインキャッシュ共にマイニング収益が大幅に低下している事を大手仮想通貨取引所「BitMEX」が発表しており、一時はマイニング費用がマイニング収益を上回ってしまう程となっていました。(※下記の図のグラフは赤線が「マイニング収益」で灰色の線が「マイニング費用」)
引用:BitMEX
↓ビットコインやビットコインキャッシュのマイニングによる損失についてはこちら
しかし、今後いかにしてSBICryptoがビットコインキャッシュのマイニングシェアを獲得していくのかに要注目です。
SBICryptoはマイニングによって市場の「安定株主」的存在を目指す
「今後30%以上のビットコインキャッシュのマイニングシェアを獲得する」と力強く主張した北尾氏ですが、SBIグループでは昨年から「市場の健全化の為には「安定株主」のような存在が必要」だと主張していました。
「安定株主」とは、既存の株式会社において長期的に安定して株式を保有する株主のことであり、安定株主の存在によって敵対的買収の難易度を下げています。
マイニングでもそのような「安定株主」的な存在がいることで、一部のマイナーがネットワークを独占する事を回避し、「51%攻撃」のリスクを下げる事にも繋がります。
なお、2019年にはマイニング用チップを大手企業と共同で開発する予定のSBIグループですが、今後のSBIによるマイニングシェアの拡大と健全な市場の発展に期待したいところです。