仮想通貨

規制?緩和?仮想通貨取引で進む国際間でのルール作り。

 

日本における仮想通貨の規制強化

2009年に市場に登場したビットコインを始めとする仮想通貨は、ますますその利用の幅を広げています。 特にシステムの根幹であるブロックチェーンは、様々な分野で扱われるようになりました。 また、仮想通貨は金融商品としても魅力的で、各国で仮想通貨取引は盛んに行われています。 特に1ビットコインあたりの価格が約240万円となった2017年は、仮想通貨元年とも呼ばれ、仮想通貨の市場取引が非常に盛んになる契機となりました。

しかし仮想通貨取引が盛んになるとともに、従来の金融商品とは異なった性質から生まれる問題が取りざたされるようになっています。 それにつれて日本をはじめとする仮想通貨の取引を行っている国々では、仮想通貨取引の規制や対応などが重要視されるようになりました。仮想通貨取引には、取引所の通貨不正流出や資産の目減り、ハッキングなどのリスクがあります。 仮想通貨を通してのマネーロンダリングや不正送金などにも利用されることもあり、しばしば国際的な問題となっています。 更に仮想通貨はそのものが取引される金融商品です。 そのためインサイダー取引による不正な利益享受が行われるリスクも含んでいます。

新しく誕生した仮想通貨は既存の法規では対応が難しく、これらのリスクへの対処は国際的にも大きな関心事となっています。 ですが、仮想通貨は規制を行えばよいというものではありません。 たしかに規制を強化することで仮想通貨の取引の安全は保たれ、その価値は益々大きなものとなるかもしれません。 しかし規制によって金融テクノロジーにおける技術革新が妨げられることも懸念されています。 このような相反する面を調和させるためには、各国それぞれ取引の安全と技術の発展とを調和させる規制に頭を悩ませています。

マウントゴックス事件で注目された日本の仮想通貨規制

日本では仮想通貨取引のルール作りが進む前に、仮想通貨取引所である「マウントゴックス」による、顧客の資金着服事件が起こりました。 この事件によって多くの仮想通貨取引者に被害が発生し社会問題に発展しました。 しかし事件が起こるまでの日本の法規では、仮想通貨取引をどの法律によって捉えればよいのかが明らかではありません。

そのため仮想通貨取引を明文化した法律の制定が求められました。 また、日本は「FATF」(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)と呼ばれる政府間機関に参加しています。 「FATF」は国際社会におけるマネーロンダリングやテロ組織への資金流入を防止することを目的としています。日本は「FATF]の要請に応えるため、仮想通貨取引を規制する法律をいち早く制定する必要がありました。 そこで日本では、2016年5月25日に「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」が可決されました。 これは「改正資金決済法」とも呼ばれ、仮想通貨を規制する法律として複数の法規の改正案と共に制定された、仮想通貨のインフラ整備法規です。

「改正資金決済法」によって、仮想通貨は法定通貨と交換する事のできるものとして規定されました。 仮想通貨取引所は登録が必要であるとし、さらに取引所にはシステムの保全やユーザー保護を義務付けています。 法改正によって、仮想通貨取引は登録された取引所によって行われるため、不正な資金流用を防ぐことが可能となりました。 「改正資金決済法」によって安心した取引が行われ、金融業界における仮想通貨取引を更に発展させることも期待されています。

中国では規制強化による仮想通貨取引離れに懸念

中国は世界最大のビットコイン取引が行われている市場です。 取引数だけでなくマイニングコミュニティも世界最大数抱えています。 マイニングとは仮想通貨で使われているブロックチェーンを解析し、正しい取引であると承認する作業です。 しかし仮想通貨取引において世界トップの中国では、他国よりも厳しい規制が仮想通貨に行われることが検討されてきています。 規制の1つとして、中国では2017年に新規仮想通貨の公開(ICO)を禁止し、続いて中国本土における仮想通貨取引所での仮想通貨取引を停止しました。 これによって中国での仮想通貨取引は、既存の仮想通貨を店頭市場(OTC)で取引する形に限られました。

マイニングコミュニティに対しても、大量の電力を消費することを理由に、マイニングに必要な電力を縮小するように要求をしています。 そのため中国では、店頭取引による取引の鈍さとマイニング速度の遅さから、仮想通貨取引離れを引き起こすことが懸念されています。 では、なぜ中国はこのような規制を急いでいるのでしょうか。 その理由の1つとして、仮想通貨取引の投機性があげられています。

中国は2000年以降、不動産や金融商品など、様々な相場で大きな振り幅の浮き沈みを体験してきました。 このような金融リスクに対抗するため、先んじて仮想通貨取引に対する強い規制を講じたと目されています。 しかし、中国では仮想通貨取引の強い規制はあったとしても、仮想柄取引の禁止はしていません。 さらに中国人民銀行を中心にした仮想通貨取引の運用も始まっていることから、中華人民銀行主導の仮想通貨取引を中国は進めようとしていると考えられます。

規制の強化と緩和に揺れる韓国の仮想通貨取引

韓国の仮想通貨取引はとても人気があり、投資先や投機先として多くの人が利用しています。 しかし、取引への熱狂ぶりは大きな社会問題ともなっています。 韓国の仮想通貨取引は、大きな負債を抱えてしまう投資家などを産んでしまいました。 それだけでなく、仮想通貨取引はしばしばマネーロンダリングや不正な資金流用に利用されることが指摘され、問題視さています。 特に韓国では隣国への不正送金の手段として仮想通貨が使われることもあり、国際社会から仮想通貨取引の規制が求められています。 このような事情から韓国では、仮想通貨取引に対して、健全な取引市場を形成することを目的とした規制が行われるようになりました。

2017年12月に韓国政府は仮想通貨取引について投資家保護を目的とする規制を行う事を発表しました。 投資家が仮想通貨による損失が回復不能となる状況を防ぐよう対策を取ることを仮想通貨取引所に義務付けるものです。 さらに2018年1月に、仮想通貨取引量を抑制し不正送金を防止するため、無記名預金口座を利用した仮想通貨取引を禁止しました。 身分証明を厳重に行い、規制に沿った投資家による取引を行うことを定めた規制です。 取引を透明化し、マネーロンダリングなどの不正処理を防止するためには有効と考えられましたが、仮想通貨市場はこれに反発し、値崩れを引き起こしました。

反発を受けて2018年2月、韓国では仮想通貨取引に対する規制が緩和されることになりました。 この規制緩和によって韓国の金融市場は、仮想通貨取引の活発化だけでなく、ブロックチェーンを用いた技術の発展を期待していると考えられます。 また、韓国政府の動向はこれまでも仮想通貨取引市場に影響を与えているため、市場は規制の内容を常に注目しています。 2018年の規制緩和の発表の後には、ビットコイン価格が高騰しました。

海外における仮想通貨の規制

仮想通貨取引が活発化した2017年以降、厳しい監視にも関わらず仮想通貨を利用した不正は行われ続けています。 仮想通貨における不正は、マネーロンダリングや資金の不正流用、ハッキングによるサイバー窃盗など様々です。 不正は世界中を股にかけており、1つの国による規制だけで対処することは非常に難しくなってきました。

そのような仮想通貨の情勢の中でドイツ中央銀行のヨアヒム・ビュルメリング理事は次のような発言を、2017年にフランクフルクにおいて行いました。 「仮想通貨に対する規制は国ごとではなく、国際的に取り組む必要がある」 この発言を受け、EU加盟国などによる仮想通貨取引のルール作りが進むだけでなく、国際的なルール作りを進めるべきとの声が上がるようになりました。特にルールづくりにおいてICOは仮想通貨と分けて捉えられるべきとの意見が多くみられます。

アメリカではICOを有価証券とみなして、取引には厳しい監視が行われています。 また、2018年の段階で10兆ドルを超えると言われているオフショアマネーが、仮想通貨市場に流れ込むことは、多くの先進主要国の懸念材料です。 しかし不正を処置しようと強い規制をかけるだけでは、それによって市場が大きく揺さぶられてしまいます。 くわえてリスクが伴っても投資機会を得たいという意見も少なくないため、国際社会が連携したルール作りは進んでいるとはいえません。

G20では先送りになった仮想通貨の規制

以上のように、国際社会では仮想通貨規制についての関心が高まっています。 2018年3月20日に開催されたG20による財務相中央銀行総裁会議では、仮想通貨についての規制案が最大の懸案となると考えられていました。 G20とは主要首脳国会議(G7)のメンバーに、ロシアやEUおよび新興国を含んだグループおよび会議のことです。 しかし、大方の予想に反して、アルゼンチンで開かれたG20による財務相中央銀行総裁会議では、仮想通貨規制についての議論は先送りされることで閉会しました。

仮想通貨取引が持つ金融安定性へのリスクについては、国際機関に対し監視を促すことを要請することが決定しました。 さらにG20参加国は、2018年7月までにマネーロンダリングに対する規制案を用意することで合意が行われています。 このG20で規制が話し合われなかったことは世界を驚かせました。

仮想通貨の取引量が世界GDPに比べて1%未満の大きさしかなく、世界の財政的な安定を乱すほどではないと判断されたことが、規制が先送りとなった最大の要因です。 また、仮想通貨が持つ技術的な展望を見てから判断するべきであるともされました。 閉会にあたって会議の声明によって、仮想通貨の動向を見据えた上で、仮想通貨規制の議論は今後必要ならば検討することになると発表されました。 しかし、この検討については全ての国が同意したとはいえず、これから先に規制が検討されることを否定する参加国も存在しています。

先送りになった仮想通貨規制。今後はどうなるか。

G20では仮想通貨について、技術的発展には期待ができるが通貨としての特性を欠く「暗号資産」であるとの見解を示しました。 市場は規制の強化が発表されると影響を受けて下降しやすくなるため、その点で今回のG20による発表は市場へ一定の安心感を与えるものになりました。 特に仮想通貨が持つブロックチェーンなどの技術的な展望についての評価は明るい要素といえます。

仮想通貨の技術はこれからも既存のものとは異なる金融システムを生み出していくでしょう。 ただし、このような技術的な側面はあるものの、仮想通貨はマネーロンダリングなどの不正の温床となることも否めません。 G20ではこれらのリスクへの問題を解決していないため、マネーロンダリングについての対策杏とともに、仮想通貨の規制を求める声が上がることが考えられます。

日本では、仮想通貨が貨幣でなく「暗号資産」という投資商品であるとされたことを受けて、投機的な仮想通貨取引に対して規制が行われるようになるかもしれません。 また、世界各国では国家独自の仮想通貨の発行が進んでいます。 政府主導で仮想通貨を発行した国は2018年3月の段階で中国、ロシア、ウクライナ、エストニア、ドバイ、ベネズエラなどがあります。 国家独自の仮想通貨は外国への投資による資産流出を防ぐだけでなく、莫大な規模で流通をさせやすいため、グローバルスタンダードとなりやすいといえるでしょう。 そのため、次世代を担う仮想通貨として国家が発行する仮想通貨は台頭してくるかもしれません。

規制は安全と発展のバランスが大事

2017年の仮想通貨元年から仮想通貨の取引は身近なものとなり、仮想通貨の流通量の増加にともなって規制の強化は常に考えられてきました。 しかし仮想通貨の規制については、技術の発展を阻害する危険だけでなく、国際社会で協力して規制をしなければ不正を防ぐことが難しいという2つの側面があります。 それらのバランスを上手く取りまとめた、国際的に足並みを揃えた規制を生み出すことが、健全な市場の発展や信頼性を生み出すともいえます。 そのためG20などの国際会議は市場動向を考えるに当たって目が離せません。