仮想通貨

フィリピンは仮想通貨大国となるか。その事業環境や今後の可能性を考察

フィリピン経済の現状と問題点

「アジアの病人」そう呼ばれてきた東南アジアに位置するフィリピンは、近年になって毎年5 〜6%を超える経済成長率を誇っており、人口増加率も1.7%でその平均年齢は23歳という驚異の数字を魅せています。

そのような経済成長率や若い人口構成から、フィリピンは潜在的なポテンシャルを感じさせる国となりました。

さて、このフィリピンの国内総生産(GDP)の内の10%は、海外への出稼ぎ労働者による送金によって成り立っています。

そのようにフィリピンでは国際送金が大きなマーケットとなっており、2017年はその送金額がおよそ3兆円にも及びました。

しかし、そこで問題となっているのが国際送金における高い手数料コストです。

仮に送金手数料が10%だとすれば、その額年間3,000億円が手数料として銀行の懐に入れられます。

出稼ぎ労働者は少額の送金でも大きな手数料を取られ、例え1,000円であっても現地の人にとっては大きな金額となるにも関わらずです。

そこでこの問題を解決出来る可能性を秘めているのが「仮想通貨」です。

また、フィリピンでは銀行口座の保有率が30%であるにも関わらずモバイルインフラはかなり普及しているので、そのような観点からもフィリピンにおける仮想通貨の実需と可能性は大きく期待されているのです。

では、以下よりフィリピンに関する仮想通貨や、仮想通貨関連事業の事業環境についてを見ていきます。

フィリピンの問題を解決する仮想通貨「ノアコイン(NOAH)」

ノアコイン(NOAH)とは、上述したようなフィリピンの社会問題を解決して経済成長を支援することが目的の仮想通貨です。

このノアコインは年間3兆円のも及ぶ送金額をほぼゼロに抑え、尚且つ銀行口座を保有しないフィリピン人でもスマートフォン一つで国内どこにでも送金が出来る手段を提供するというコンセプトを掲げています。

このノアコインはICOによって資金調達し、現在はHitBTCに上場しています。

ですが、ノアコインはフィリピン政府や中央銀行も公認していると発表されていたものの、それらは政府や中央銀行とは無関係だった事実が公式で言い渡されました。

他にも提携していたはずの「フィリピン航空」からも「それらは一切関係ない」と発言され、ノアコインが詐欺扱いされるようになったのです。

その後これらの事態を受けてノアコインプロジェクトの運営元である「ノア・プロジェクト」及び「ノア・ファンデーション」は投資家への返金をするにまで至ったのです。

引用:coinmarketcap

そんなノアコインは上場以降下落を続け、現在はほぼ横ばいの価格推移ですが、国際送金のマーケットを狙う仮想通貨は、リップルやOmiseGOをはじめ他にも数え切れない程存在しており、特にフィリピンでは「Coins.ph」という国際送金・決済サービスを手掛けるスタートアップも存在しているので、競合は多いでしょう。

ノアコイン(NOAH)が基軸通貨の仮想通貨取引所設立で高騰|フィリピンはクリプトバレーを目指すノアコイン(NOAH)が一夜にして150%越えの高騰を魅せる。 ノア・ファンデーションによってプロデュースされた仮想通貨「ノアコイン(...

日本企業が発行する仮想通貨「フィリピングローバルコイン(PGC)」

引用:PGC公式サイト

ノアコインに続いてフィリピン向けに新たに生み出されたのが日本企業発の「フィリピングローバルコイン(PGC)」です。

このPGCの特徴はノアコイン同様に、国際送金の手数料コストや時間的コストの削減する事に加え、フィリピンにおける「マイクロファイナンス」を手掛けます。

マイクロファイナンスとは、貧困層向けの小口融資のことであり、これによってフィリピンにおける貧困層へ小口金融サービスを通じてアプローチします。

そしてPGCの発行元は厳密に言うと日本でマイニング事業を展開する「デジタルカレンシー株式会社」と現フィリピンの大統領の弟であるエマニュエル・ドゥテルテ氏による合弁会社「J-PGC」によるものです。

しかし、このJ-PGCの取締役が2018年5月1日に警視庁に逮捕されたと報道されました。

取締役である奥野氏は一昨年に東京で起こった現金を奪った暴行事件に関与していたとの疑いをかけられており、本人は容疑を否認しています。

一見仮想通貨関連とは関係の無いニュースですが、これがPGCの今後に悪影響をもたらす可能性も無くはありません。

フィリピン政府は経済特区カガヤン州で仮想通貨事業を許可

以上で取り上げた2つの仮想通貨には、それぞれネガティブなニュースもありましたが、将来のフィリピン経済を活性化させられる潜在能力を秘めており、今後の動向には注目です。

さて、そんなフィリピンでは、政府が仮想通貨事業を展開する事業者の為に特別経済区域であるカガヤン州での事業展開を許可しました。

このカガヤン経済特区はフィリピンがFinTechのハブ的存在となることを目的としており、「アジアのシリコンバレーを目指す」とされています。

今後は仮想通貨取引所やマイニング、ICOに関する事業を認可していく方針であり、フィリピン政府は仮想通貨事業の進出を全力で支援しているのです。

このカガヤン経済特区でビジネスをする為には現地のフィリピン人を採用すること、2年間でおよそ1億円を投資すること、ライセンス料をおよそ1,000万円払うことが必要とされています。

なお、フィリピンの他に南ヨーロッパのマルタ共和国でも仮想通貨に関する法的枠組みを整備し、世界中の取引所への誘致をかけています。

物理的に支店を置かず、インターネット上でサービスを展開出来る仮想通貨関連事業は、いわゆる「リモート型」でビジネスをすることができるので、そういった事業者は世界の中でも税制が優遇されていたり法的整備が整ってビジネスのし易い最適な国へ移転することができます。

フィリピンに進出する日本の仮想通貨取引所

このように仮想通貨事業の為の経済特区も設けられているフィリピンですが、日本の仮想通貨取引所「QUOINE」はフィリピンで仮想通貨取引所を開始すると発表しています。

なお、同じく日本の「みんなのビットコイン」の親会社であるトレイダーズホールディングスも2018年の2月にカガヤン経済特区と仮想通貨事業の技術提携に関する合意を締結したと公式に発表しています。

日本企業にとって、フィリピンは比較的移動時間も短くアクセスが良いメリットもあり、日本の取引所がフィリピンに誘致されているのです。

日本では他にもビットフライヤーがルクセンブルクに子会社を作っており、ビットポイントは韓国や台湾でも取引所事業を始めています。このようにどんどんと最適地を見つけ出す動き出す仮想通貨事業者のグローバリゼーションは今後も世界的に広まっていくでしょう。

それは、一度混ざってしまったらもう元に戻らない自然現象のようにも感じ取れます。

フィリピンは仮想通貨によって革命を起こすか

このように、現在仮想通貨に対して大きな盛り上がりを魅せているフィリピンですが、「フィリピンに大きな仮想通貨の実需がある」といった観点と「仮想通貨関連事業の優遇地として世界各地の事業者がフィリピンで活躍するだろう」といった観点から、大きな期待と可能性を持つ国なのではないかと筆者は考えています。

フィリピンでは、国際送金の問題も当然ありますが物理的に通貨を持つこと自体がまだ危険でもあります。フィリピンの首都マニラであってもまだ物乞いやスリなどが多発しており、多くの観光客が被害にあったりしています。

そのような観点から「お金のデジタル化」はやはり役立ちます。

なお、フィリピンではセブ島を中心とした格安の英語留学が盛んですが、仮想通貨を使って国際送金のコストを省くことが出来れば、フィリピン人はビデオ通話などで国境を超えて気軽に英会話サービスを提供することも可能です。

国際送金が掛からない分、サービスの受け手はより安く利用することができ、料金は「投げ銭」のように瞬時に行うことができるのです。

以上のように、様々な側面からフィリピンでの仮想通貨の活用を見ることができますが、フィリピンでは環境的なインフラの課題もあり、どこまで仮想通貨が先に成長するのかは不透明ですが、潜在的な可能性やポテンシャルは大きく持っている国と言えるでしょう。